大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 心の旅路

おやまさいぐ(下北方言)

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私:陸奥方言という表題にしようか迷ったが、方言区画論に従い下北方言にした。青森県の方言は三つだ。下北、津軽、南部。
君:「山へ行きます」という意味よね。
私:勿論そうなんだが、下北半島で、というか陸奥市で敬称で呼ばれる山「おやま御山」と言えば恐山の事。
君:なるほど、つまりは単に「山に行きます」の意味ではなく、「恐山に行く」という事は「黄泉(よみ)の入り口へ行ってみる」という意味だったのね。
私:その通り。★死んだ人に会ってくる、★臨死体験をしてしまう、或いは★没する事そのもの、この三つの意味。佐七はお山さ行ったきり帰ってこない、と言えば佐七は現世にはいないという意味。幸い佐七はお山には行ったが帰ってきた。
君:それで会えたの?
私:いや、会えなかった。彼のような不真面目な人間には知りたくても知りえない世界という事のようだ。
君:飛騨でお山と言えば御岳よね。
私:ああ、御岳。山全体に無数とも言える神社と蘇東坡。日本全国からバスの団体さんがお参りなさる山だ。佐七は日帰りツーリングでよく御岳に行く。田の原神社。山の中腹に広大な平野がある。富士山の山梨県側・富士スバルラインと同じ感じだね。但し富士は有料道路。御岳と恐山は一般道なので共に無料。
君:格助詞「さ」は坂東方言ね。東国、つまり関東・東北の方言。
私:そう。京に筑紫へ坂東さ
君:カ行動詞が濁音化するのも坂東方言ね。
私:そう。飛騨方言と同じく下北方言も濁音と鼻濁音の違いで区別しているらしい。「濁音と鼻濁音の相補分布」と言う方言学の命題だ。
君:簡単に説明してね。
私:「カグ」だが「書く」が「カグ」になった場合は濁音。「かぐ嗅ぐ」も「かぐ家具」も鼻濁音。従って濁音「かぐ」は「書く」で決まり。
君:「御山さ行ぐ」は忌み言葉ね。
私:そう。飛騨方言でも不治の病で回復の見込みがない事を「焼かにゃあ治らん」という。つまり火葬。
君:ブラックユーモア。うかつに使えないわね。
私:そう。「治るといいですね」と言うべきだろう。
君:どうして恐山へ?奥様と?
私:ああ。ひとりでお参りの老爺が多かった事と「水子池」なる場所に無数とも言える風車が飾られていた事、この二つが私共の涙を誘った。ところで恐山は天台宗。日本人なら仏教の死生観を知らねばね。正信偈(飛騨方言訳)も参考までに。源信(天台宗、往生要集)は日本の浄土教の祖、法然や親鸞に大きな影響を与えて浄土真宗の誕生に至った事は日本史で学んだ通り。そして歎異抄
君:まずは教行信証、後生の一大事よね。人間はこれを知るために生まれてきた。

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