ザ・飛騨弁フォーラム 方言グッズ |
フレッシュフーズカシキ |
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私:秋の日曜日、天候は曇り、オートバイでトボトボと奥飛騨温泉郷へ紅葉目当てに行ってきたよ。少し早かったかな。栃尾温泉で「カシキ」という看板を見てビビッときた。 君:ほほほ、「かしき」は古語にあるわね。他カ四「かしく炊」の連用形「かしき」、つまりは「かしき」は「食事の用意」という名詞。 私:いや、厳密には「かしき」とは「ご飯を炊く事」の意味だ。然も古代には「こしき甑」でご飯を炊いた。動詞「かしく」は「こしき甑」から来ている。 君:そう言えば日本史で習ったわね。須恵器とか、あれこれあったわね。忘れたけど。 私:今日のツーリングの話題は奥飛騨の紅葉ではない。栃尾温泉でびっくり、食品スーパーの屋号が「フレッシュフーズカシキ」だったんだよ。 君:なるほど。ほほほ、帰宅後は早速にネット検索をしたのでしょ。 私:勿論。 君:あら、有限会社柏木商店様じゃないの。「かしわぎ」が「かしき」に音韻変化したという事かしら。 私:早速に全国の苗字情報サイトも複数あたってみた。結論から言うと「柏木」という表記は普通は「かしわぎ」と読む。全国に「かしき」の苗字が十数人いらっしゃるようだ。全員が三重県。情報はここ・ 君:なるほど。「かしき」の姓の漢字表記は「炊」で決まり、つまりは古語という事ね。 私:実は「かしき」は立派な飛騨方言。別稿もご参考までに。日葡辞書とこことここ 君:Caxiqu Caxiqi という事は中世畿内方言ね。 私:その通り。ただし東京堂出版「近世上方語辞典」には記載が無い。つまりは近世には死語。 君:「かしわぎ」から「わ」が脱落した可能性は? 私:冗談はよしてくれ。苗字だぜ。音韻変化なんかするわけないでしょ。先祖代々、大切に守られて来たもの、それはご家庭の苗字だ。というか、江戸時代まで平民には苗字がそもそもなかった。その家の生業(なりわい)が苗字の役割をしていた。友人に堀部姓がいるが、ご先祖様は炭鉱夫だったのかな。我が家の姓には山がつくので左七のご先祖様は木こりだった事は間違いない。 君:それを言うなら左七のご先祖は飛騨工でしょ。 私:うん、それも間違いないな。ところで寛永の仏壇過去帳があったが、我が家は二度に渡り両もらい。いったい、左七は何処の馬の骨? 君:卑下する事なんかないわよ。皆が何処の馬の骨。氏より育ち。 私:まあね。「かしき」に戻ろう。食料品店の屋号が「かしき」だからビビッと来たんだよ。辻褄が合っている。 君:確かにね。 私:つまりは当て字。明治だろう。「炊」にしてほしかった。 君:おっと、そうきたわね。 私:あくまでも推論。 君:アクセントは? 私:「かしき」は平板。ただし他カ四「かしく炊」は中高じゃないかな。 君:どうして? 私:そんなの常識さ。カツオを「たたく(中高)」と「たたき(平板)」になる。同じ方程式。これをアクセント学では「類別分類」という。「嘆く・嘆き」とかね。中高三拍カ行動詞はどうやら類別語のようだね。同語は平たく言うと同じ穴の狢(むじな)の事。 君:若しかしてフレッシュフーズカシキにカツオのたたきが売られていたのかも。ほほほ 私:うん。ところで帰りは神岡経由だった。県職員住宅解体工事開始を目にして思わず涙。 君:えっ!降る雪や明治は遠くなりにけり(中村草田男)、と言うか、遠い昭和の雪深い船津の青春ね。もらい泣き(TдT) |
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