大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム

夕立にかりぼしまたじにいそぎょうった

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この句では三つの飛騨方言がはいっています。 かりぼしとは家畜のえさ用に刈る夏草のこと、 またじとは片付けの事、 いそぎょうる、とは急ぐという動詞の連用形に"ようる"を足して、まさに〜しています、という意味の飛騨方言独特の言い回しです。 これを過去形にしますと、いそぎょうった、になります。意味は、まさにいそいでいた、という意味です。

夏草は、刈ってもそのままでは腐敗しますので、冬の家畜のえさ用にはなりません。 これを夏の強い天日で完全に乾燥させなくてはなりません。日のあるうちは農家の軒先などに刈ってきておいた夏草を干しておきます。 夕立がくれば、これをさっと片付け、つまりまたじをします。 次の日もまた干します。夕立がこなくても夜露にぬれてはいけませんのでやはり、またじをします。 完全に乾燥できたら、これをにんぐの形で屋外に保存します。

現在はこのようなかつての飛騨の農村風景はみられないでしょう。 家畜を飼う農家がなくなった今、かりぼしも、かりぼしにんぐも、夕立にあわててそれをまたじする人もいなくなった。 夕立にかりぼしまたじにいそぎょぅる、と現在進行形の表現でもよいのかな、とも思いましたが、 かつては急いでいた事よ、としたほうが、そういえば昔は、という実感のかたが多いでしょう。

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