大西佐七のザ・飛騨弁フォーラム 

ビッタ Bitta

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ブログを発見しました。Bitta-ビッタ-飛騨高山の街を走るフルーツカフェなんと私の出身の久々野町に生まれ育った御方でした。久々野町は小さな町とはいえ、人口約四千、戸数約千くらいでしょうか。果樹園も複数あるので、面識がないのはもとより、故郷久々野を離れて50年も経っていますので地勢が既にあいまいになっています。Bitta をキーワードにネット検索しますと唯一の情報のようで、ユニーク性としては十二分ですね。ユーチューブ発信もしておみえのようです。

早速に本題、と申しますか、結論ですが、「ビッタ」を『飛騨方言で女子の卑称です』とお書きになっていらっしゃる点を、おやっ、と思ってしまいました。手元の方言学の書籍、辞典などを渉猟しましたが、昭和辺りまでの飛騨方言における女子の卑称は「ビー」です。「ビッタ」ではありません。

では早速に方言学のお話を。勿論、女子の卑称で「ビッタ」が使われる地方もありますが、件の資料では青森県・岩手県辺りの言葉です。大胆な推測としては、私の故郷・岐阜県高山市久々野町では、かつては「ビー」の音韻であった女子の卑称を表す名詞ですが自然発生的に「ビッタ」も使われるようになった、という事なのでしょうね。つまりは私流に解釈しますと、今どきの久々野町における若者言葉「ビッタ」ではないか、つまりはネオ方言(その一,その二,その三)でないかと推察します。悪源太の例の如く「〜太」は男子の呼称、つまりはおてんば娘を殊更に強調して「ビー」+「タ太」で「ビッタ」の促音便というところでしょうか。あるいはご家族は皆様が生まれ育ちが久々野という事ではなくて、青森・岩手に関係しているかも、可能性としては否定はできません。直接、お聞きすれば解決できる疑問かもしれませんが、私の興味は若者の自然言語、という事なので、しばらくは ROM (Read Only Memory)つまりはレスを発信しない読者でいようかと思っています。

今、ネットに公開されている飛騨方言スタンプの語彙を片っ端から調べてみましたが「ビッタ」は見当たりませんでした。「ビー」のスタンプは勿論、存在します。飛騨方言においては「ビー」は伝統的方言、「ビッタ」はネオ方言にて飛騨方言としては激レア名詞であろうと確信いたします。言い換えますとは商標価値は十分という事です。イディオレクト idiolect という学術語がありますが、一個人が持つことばの体系、個人語、とも言います。若し「ビッタ」がそうであれば商標価値は猶更の事という意味です。

折角なので方言学の豆知識ですが、小学館標準語日本方言辞典によれば「女の子」を示す方言は全国にざっと二百ほどです。また小学館日本方言大辞典全三巻には女子の卑称としては「ビー」が代表語で記載されていて、これから派生する音韻がざっと三百ほどです。つまりは簡単にひと言で表すと数えきれないほど。更には両辞典とも各種の方言資料に記載されているものを集めただけの事、実際に全国で話されている「女子」を示す方言となると、数百という事になるでしょうね。しかも言葉はどんどん変化します。「ビッタ」は私が久々野町では聞いた事のない言葉です。

「ビー」の語源ですが、男の子は全国的に「ボー坊」と言うのに対して、女の子を「比丘尼」といった所から、あるいは「美」「微」「婢」などの漢字を当てる解釈があります。古語辞典には「」の記載がありますね。なぜ「女子」という言葉の方言はかくも多いのか、ご興味ある方は「方言量」をご参考までに

コロナ禍等にもめげず、明るく営業しておられるようで、末筆ながら、また陰ながら応援させていただきたいと思っています。オートバイで県内、特に飛騨のあちこちをブラブラする事が趣味になっていますので、街角でお逢い出来るかもしれません。春になってバイクで飛騨を訪れるまたひとつの楽しみが出来ました。

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